昨今問題になっているコロナ禍での内定取り消し。
厚生労働省によると2020年9月17日時点では内定取り消しになった20卒新卒内定者の数は174人にのぼるとのこと。
この数も少し前までの売り手市場を考えるとかなり数ではありますが、この数字以上に「事実上の内定取り消し」は存在します。
この数は、あくまで事業主がハローワークに連絡した数であって、事業主によりうやむやにされた内定取り消しというのはこれ以上の数になるわけで。
そして、そのうやむやになった内定取り消しの代表格が「サイレント内定取り消し」です。
今回は、その「サイレント内定取り消し」について解説します。
ちなみに、私も「サイレント内定取り消し」を受けて、意地張った結果、内定取り消しになりました。経験談をもとに解説していきますね。
サイレント内定取り消しとは?
内定辞退の促進・強要による自己都合退職
まず、サイレント内定取り消しとは何か?について。
一言で言うと、内定辞退や自主退職の促進・強要による自己都合退職です。
要は、内定取り消しだと会社都合の退職になりますが、サイレント内定取り消しは会社が労働者をうまいこと言って自主退職に持ち込み、事実上の内定取り消しをするやり方。
企業的には、内定取り消しという不名誉なやり方はしていないと言えて、人員も削減できるという、ノーリスクなコストカット施策です。
具体的には後述しますが、研修で煽って入社意志を削いだり、安い給料で永遠に試用期間とかで時間稼ぎしたりして、労働者が自ら辞めるのを待つやり方が基本的なサイレント内定取り消しになりますね。
リーマンショック時も起こった遠回しな内定取り消し
この言葉をつくった人が誰かは定かではありませんが、私が知ったのは転職エージェントUZUZ専務である川畑さんのこのツイート。
また、言葉としてはコロナ禍にサイレント内定取り消しが多発したことによって生まれましたが、実際にはリーマンショック時にも同じようなことは行われていたようです。
リーマンショックによって内定取り消しになった新卒内定者の証言が詰まった書籍『内定取消!終わりのない再就職活動日記』という本でも「内定辞退の強要」とも思える企業側のやり口が多く登場します。
入社1か月前に急な面談をし、高圧的な態度で学生をつめる。内定辞退の契約書を書くように仕向けるための一方的な面談など。。。
後述するサイレント内定取り消しの具体的なやり方に当てはまる行動が多く書かれています。
サイレント内定取り消しが行われる理由
会社は内定取り消しと認めなくて済むから
そんなサイレント内定取り消し。なぜ行われるのか?
薄々気付いている方もいるかもしれませんが、シンプルに会社にとって都合がいいからです。
会社がサイレント内定取り消しをした場合、正式な内定取り消しではないため内定取り消しをしたと認めなくて済むんですよね。
それだけ会社にとって内定取り消しは都合が悪い。
内定取り消しというのは、会社からすると
- 経営不振を認めることになる
- 会社の信用性が落ちる
- 内定取り消しした学生に補償金を出さないといけない
- 内定取り消しをした企業というらく印が押される
- 内定取り消しした学生から恨みを買うことになる
などなど。不都合なことが多いんですね。
だから、そんな内定取り消しを避けるためにも、学生を追い詰め自主退職を促して、企業は「内定取り消しをしていません。軽く面談をして学生が自ら自主退職しただけです。」と言えるサイレント内定取り消しが横行するわけです。
会社への訴訟防止などのリスク低減にもつながる
因みに、労働者側からすると溜まったもんじゃないですよ。
会社から一方的に追い詰められて、自主退職を強要されたりしても、内定取り消しが認められないので。
そのため、訴訟したとしてもかなり不利。
ハローワークや大学に相談しても、正式な内定取り消しではないため、あまり企業に口出ししにくい。
会社にとっては内定取り消しをせずに済んで、かつ訴訟や注意勧告などのリスクも避けられる。そのため、サイレント内定取り消しが横行することが多い傾向にあります。
サイレント内定取り消しが行われる理由からしても、このサイレント内定取り消しは紛れもなく会社側にしかメリットが無いというタチの悪いやり方ですね。
人によっては、会社の圧に屈して内定辞退しただけだと思い込んで、サイレント内定取り消しすらも気付かない人もいます。まじのサイレントやん。
サイレント内定取り消しの具体的なやり方
それでは、サイレント内定取り消しの具体的なやり方について紹介します。
サイレント内定取り消しを実際に受けた私の経験や、先ほど挙げたUZUZ川畑さんの話や『内定取消!終わりがない再就職活動日記』での体験談などをもとに5つにまとめました。
1つ1つ詳しく解説しますね。
無給の入社日延期
まずは、無給の入社日延期というやり方。
コロナの影響で入社日を延期しますとだけ言われて、そこからずっと放置。
給料も出ない。出てもかなり薄給。
会社に何とかならないかと連絡しても冷たい対応。
そんなことを通して、「この会社じゃやっていけないんじゃないか」とか「会社に入っても仕事ないんじゃ」とかを思わせて、自主退職を促す。
もしくは、「さすがに2か月も入社日延期されて、まだ未定なのなら他の会社に行く!」となって、自主退職。
こういうやり方で自主退職を促すサイレント内定取り消しが存在します。
私も、新卒で入社予定の会社が、2か月ほど無給の入社日延期をしていたので、思わず転職活動していましたからね。
急にはじまるかもしれないから、下手にバイトもできないし。かなり陰湿なやり口ですね。
薄給の雑務の押し付け
薄給で雑務だけをひたすら押し付ける。
これは、UZUZの川畑さんが仰っていたサイレント内定取り消しのやり口。
仕事がはじまったけど、コロナで仕事があまりないから、雑務だけ。
雑務だけしかやらないから、給料は下げておくね。
その雑務だけの仕事がいつまで経っても変わらない。
「自分は会社にとって不要な存在なのかも」とか「給料が少なすぎてもうキツイ」とかを思わせて、自主退職を促すやり口。
他の4つと比べると、まだ就業が開始していてかつ給料が出ている分、まだマシに思う人もいるかもしれませんが、その分縛りがキツイわけで。
内定取り消しというワードも使いづらい状況になるため、その後の転職活動に支障をきたすなど将来的には結構つらいやり口ですね。
急な面談で圧をかける
次に、急な面談で圧をかけるタイプのサイレント内定取り消し。
入社日直前に、突然「スーツを着て会社に来てください」と言われて面談に行くと、「本当にうちの会社でやっていけるの?」とか「うちの会社の志望動機は何なの?」とか高圧的な面接がはじまるパターン。
一方的に圧をかけられて、その圧に屈して内定辞退のサインをしてしまったり。
「この会社ではやっていけない」と思い込んで内定辞退したり。
私も、試用研修中に急に面談が入って、こんなことを経験しました。
面談とは名ばかりで、一方的に「うちの会社は厳しいよ」「会社入ってから苦労するから、決断ははやいうちにしときなよ」など、内定辞退を促すような言葉を浴びせられました。
まあ、私は「頑張ります!」の一言で押し切ったんですけど。
研修で高難易度のテスト
あとは、研修で高難易度のテストを実施して追い込むサイレント内定取り消しも存在します。
学生相手に、実務経験がある人でも解きにくいようなテストを実施して、追い込むやり口。
企業側からは「まあ簡単なテストだから」とか「このレベルは仕事で普段使うからね」とか言って、テストをさせる。
そして、あまりの難易度にビビった人が「この会社での仕事ってこんなに難しいのか」とか「会社に入っても仕事についていけない!」とか思って、自主退職するというパターン。
私も、試用研修での課題が恐ろしく難しかったのを覚えています。
私の場合、未経験歓迎を謳っていたのですが、実務未経験には明らかに難しいテストで、しかもカリキュラムもない。自分で調べるしかないという鬼畜仕様の研修でした。
何が「軽く勉強してもらっていたら大丈夫です」なのかな。
からの実力不足指摘
そして、高難易度のテストからのコンボ技として、テスト結果から実力不足を指摘していくパターンのサイレント内定取り消しも。
絶対に解けないような課題を与えて、もちろん内定者は解けない。
そして、解けなかった結果という紛れもない事実をもとに実力が無いことを詰めるというやり口。
企業側から「テストをしたけど、全然解けてないよね。うちの会社は割と普通にこの知識使うからね。」と。
それを受けて、「会社に入っても仕事についていけないんじゃないか」とか思って内定辞退。
よくよく考えたら、そんなこと言うんだったら書類選考辺りでテストしろよみたいに思います。
でも、当事者からすると、そんなこと思う気力すら湧かないほどに一方的に詰められるので、多分そんな発想になりません。
まして、拡大解釈してしまうタイプの人はここで「自分は何もできない人間だ」なんて思うわけです。
サイレント内定取り消しということがわかっていたとしても、この会社から逃げたくなる気持ちは痛いほどわかりますね。
補足:大体はコンボ技でサイレント内定取り消しが実施される
以上が、サイレント内定取り消しの具体的なやり方5選でした。
このサイレント内定取り消しのやり口は大体、1つだけとかではありません。
ほとんどが、複数を扱って徐々に内定者を追い込むやり方をしています。
私の場合、2つ目以外の4つを合わせたコンボ技でキメられました。
まず、無期限・無給の入社日延期で精神を不安定にさせる。
そして、カリキュラムもなく、難易度マックスの研修課題だけを与えて放置。
案の定解けなかったら、「どうして解けないの?」と詰めて実力不足を指摘。
トドメに高圧的な面接でふるいにかける。
結果、同期が全員内定辞退というかたちで辞めました。
それでも1人で意地張った私は、内定取り消しに。
おそらく同期は全員、会社都合の内定取り消しにしたくなくてこんなことをしたのを知らないまま内定辞退をしたのでしょうね。。。
まじのサイレントですね。
最後に
複合的な視点で警戒しよう
ということで、サイレント内定取り消しについての解説でした。
サイレント内定取り消し自体は、もうここまでくると耐えるくらいしか対処はありません。
それ以前に、サイレント内定取り消しを実施する企業に出会わないためにも、内定取り消しを実施する企業を見極めたり、内定取り消しを実施する前兆を見破ることが重要です。
様々な視点で、複合的にヤバい企業かどうかを判断し、警戒しておきましょう。
その視点については以下の記事で紹介しています。
内定取り消しを実施する企業の特徴
内定取り消しが実施される前兆
どう企業と向き合うか?
この内定取り消しを実施する企業や前兆などが当てはまっていて、サイレント内定取り消しを匂わせるようなやり口をしてくる場合は、ほぼクロです。
正直、今の私ならサイレント内定取り消しが匂った時点で必死に粘って、企業が内定取り消しを出すまで諦めません。
そこは、「時間が大事だから、そんな企業すぐに辞めて転職するわ!」っていうならそれはそれでいいでしょう。
自分なりにこんなことが起こったらどうしようか?という自分なりの正解を考えることをおすすめします。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
それではまた次回。
ブログかTwitterかで会いましょう。
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